私はただ、彼の脱ぎっぱなしの上着をハンガーにかけようとしただけだった。
その時、ポケットから一枚のくしゃくしゃのレシートが落ちた。
本当に、ただそれだけ。
でも、その一枚で私は一気に目が覚めた。
レシートには、はっきり書かれていた。
生理用品、トマトジュース、夜用のスキンケア用品。
私はしばらく、その紙を黙って見ていた。
怒りより先に、変な笑いがこみ上げてきた。
だって、まずその生理用品は私が使っている銘柄じゃない。
トマトジュースに至っては、彼は私が嫌いなのを知っている。
夜用のスキンケア用品なんて、私には一度だって買ってきてくれたことがない。
つまり、そのレシートに並んでいるものは全部、
**“私のためじゃないもの”**だった。
彼が帰ってきてから、そのレシートを見せた。
普通なら、まず説明すると思う。
でも彼の最初の反応は違った。
「なんで勝手に人のもの見てるの?」
そう言って、私の手からレシートを奪おうとした。
その瞬間、逆に全部分かった気がした。
ああ、この人はいま、
**“これは誰のために買ったのか”**じゃなくて、
**“なんで見たのか”**に話をすり替えようとしてるんだって。
少し前の私なら、たぶんそこで感情的になっていたと思う。
泣いて、問い詰めて、相手の言い分に揺さぶられて、最後は「考えすぎかも」で自分を納得させていたかもしれない。
でも、その日は違った。
腹が立っているのに、不思議なくらい頭は冷えていた。
私はそれ以上何も言わなかった。
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