年金が入ったその日、私は一枚のVISAカードに殺されかけた。
通帳の数字を見た瞬間、手が冷たくなった。
年金が振り込まれて、まだ三十分も経っていない。
なのに、お金はまるで見えない手にまとめてむしり取られたみたいに、もう消えかけていた。
やっと入った。
今月は少しだけ息がつける。
そう思った私は、近くのATMへ走った。
まずは滞納していたVISAカードの支払い。
これを片づけないと、もっと面倒なことになる。
そう自分に言い聞かせて送金した。
それから生活費として五千円を引き出した。
本当なら、その五千円を握ったとき、少し安心してもよかったはずだった。
でも、できなかった。
残高を見た瞬間、頭が真っ白になった。
電気料金。
去年の軽自動車税。
火災保険。
まだ払えていない請求が、まるで入口に並んで待ち構えていたみたいに、私の目の前に一気に迫ってきた。
「先にカードを払って正解だったのか?」
「いや、払わなければもっと苦しくなったはずだ」
「でも、この残高でどうやって今月を越える?」
ATMの前で立ち尽くしたまま、私はしばらく動けなかった。
贅沢なんて、していない。
外食もしていない。
新しい服も買っていない。
我慢できることは、もうとっくに全部我慢している。
それなのに私を追い詰めてくるのは、遊びでも見栄でもなく、ただ生きるために必要な請求書ばかりだった。
その現実が、たまらなく悔しかった。
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