ドキッとした瞬間、夫のジャケットのポケットから一枚の領収書がひょっこり出てきた。
「え…?」手が震える。よく見たら、地元のスナックのものだ。しかも金額が…2万9700円!?
思わず目を疑った。出張だったはずの夫が、なぜ地元のスナックでこんな大金を使ったの?頭の中で矛盾が炸裂した。
私は一瞬で怒りに燃えた。
「これ…どういうこと?」
心臓がバクバクする。立ちすくむ私の横で、夫は何も知らないふり。いや、知らないわけがない。だって領収書は日付も金額もハッキリ書かれている。
手にした領収書を握りしめ、私は冷静になろうとした。すぐに問い詰める前に、証拠を整理する必要がある。
ジャケットの他のポケットも探った。すると…もう一枚、さらに古い領収書が出てきた。
金額は2万4200円。内訳も明細も、やっぱりスナック。
「え…何これ…」
目の前が真っ暗になる。出張と言っていた日に、こんなスナックでの飲食が重なっていたなんて。
私はスマホを手に取り、出張日程と領収書の日付を照らし合わせた。
すると驚愕の事実が浮かび上がる。全て、会社の経費申請日と重なっているではないか。
まさか…経費で自分だけ楽しんでる?
怒りが一気に噴き出した。心の中で「これで夫婦生活も終わりだ」と呟く自分がいた。
翌日、私は勇気を出して夫を呼び出した。リビングで領収書を並べ、静かに問いかける。
「ねぇ…これ、全部どういうこと?」
夫は目を逸らすだけで、言葉が出てこない。
私はさらに突き放すように言った。
「出張の間、全部会社のお金で自分の楽しみだけに使ってたんでしょ?」
沈黙の後、夫は小さく「…違うんだ」と言ったが、声が震えていて全く説得力がなかった。
私は深呼吸し、心の中で決めた。もう、騙されない。
「もういいわ。私はあなたの嘘に付き合う気はない。」
その瞬間、胸の奥に重くのしかかっていたものがスッと消えた。まるで自由になった気分。
領収書を手に、私は書類棚にしっかり保管した。これが私の証拠だ。もう言い訳は通用しない。
数日後、夫は何度も謝ってきた。けれど、私は振り向かない。
「謝るなら、まず正直にすべて話して。私はもう信じないから。」
夫は黙ったまま、何も言えなかった。
その夜、ベッドで一人、私はスマホを見ながら過去の自分を振り返った。
「なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだろう…」
でも、もう後悔はしない。証拠を手にして、自分の目で事実を確かめた私は、ようやく心からスッキリしたのだ。
翌週、夫の帰宅前に私は荷物をまとめ、リビングに置いておいたメモにはこう書いた。
「もう、あなたとはやり直せない。さよなら。」
夜、玄関のドアを閉める瞬間、自由の風が頬を撫でた。
長く感じた日々のモヤモヤ、裏切り、怒り…全部、洗い流された気がした。
そして、私は心から笑った。
もう、誰にも騙されない。自分の人生を、これからは自分で選ぶんだ、と心に誓った。