「お客様の責任になりますので、修理費はご負担ください」
車を見た瞬間、私は言葉を失った。
駐車場に戻った自分の車は、前方が大きく破損していた。
バンパーは外れ、ライト周りも歪んでいる。
まだ一歩も走らせていない。
つまり、これは“私の使用中の事故ではない”。
そう直感した。
だが、レンタカー会社の対応は早かった。
「ご利用後の損傷のため、お客様責任です」
その一言で処理されようとしていた。
私は一切感情を出さなかった。
怒鳴りもしない。
言い争いもしない。
ただ静かに言った。
「では、全ての記録を確認してください」
現場のスタッフは少し困った顔をした。
しかし私は引かなかった。
その場で、防犯カメラ映像の開示を正式に要求した。
しばらくの沈黙のあと、映像が再生された。
そこに映っていたのは——
レンタカー会社の“スタッフ自身”だった。
信じられない光景だった。
車を駐車した直後、別のスタッフが移動させていた。
そしてそのまま、バックで柱に衝突していた。
ガンッという音。
一瞬止まる動き。
しかし、そのまま何事もなかったように戻されていた。
つまり事故は、明確に“会社側の隠蔽”だった。
私はゆっくりと息を吐いた。
「これでもまだ、私の責任ですか?」
その瞬間、空気が変わった。
責任者が言葉を失う。
スタッフの目線が泳ぐ。
さっきまで強気だった対応は消えていた。
私はさらに続けた。
「映像、コピーさせていただきます」
「それと、この件は正式に処理します」
その声に、誰も反論できなかった。
数時間後、会社の上層部が現れた。
現場は一気に緊張状態になる。
再度、映像が再生される。
誰が見ても明らかな“会社側の過失事故”。
沈黙のあと、結論は一瞬だった。
「本件は弊社の全責任です」
さらに続けて——
「担当者および管理責任者は処分対象となります」
その言葉で、空気が完全に変わった。
さっきまで「お客様負担」と言っていた現場は静まり返った。
結果はこうだった。
修理費全額会社負担。
利用料金全額返金。
さらに迷惑対応としての追加補償。
そして、事故を隠そうとした現場スタッフは内部処分。
私はようやく車に目を向けた。
壊れたフロント部分を見ても、もう感情はなかった。
ただ一つだけ確信していた。
“証拠を持つ側が、最後に勝つ”
車のドアを閉める音が、やけに静かに響いた。
その日、私は二度と同じことが起きないように、すべての記録を保存した。
そしてこの件は、会社全体の監査案件へと発展していった。